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糖尿病と認知症

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2016年10月11日

2015 年 4 月 みんなの健康講座
シリーズ糖尿病 第 14 回 「高齢者にしのびよる糖尿病~糖尿病と認知症」 抄録 

糖尿病の合併症として,血管障害を基盤としたものがよく知られています.糖尿病でしかおこらない網膜症,腎 症,神経障害.動脈硬化促進によっておこる脳梗塞,狭心症・心筋梗塞などです.

近年,新たな合併症として,認知症が明らかになってきました. 糖尿病とは,インスリンの作用不足のため,ブドウ糖が有効に使われず,血糖値が普通より高くなっている状態 をいいます.インスリンとは,膵臓のβ細胞から分泌される血糖を下げるホルモンです. インスリンによりブドウ糖は筋肉・肝臓・脂肪細胞に運ばれ,筋肉では運動のためのエネルギー源に,さらにあまっ た分はグリコーゲン,脂肪となって蓄積されます.また,インスリンは脳でも学習,記憶に関与します.インスリン の働きは,肥満や運動不足になると低下し,高インスリン血症(*)であってもインスリンが効きにくくなる状態 が起こります.

高齢者とは,65 歳以上の人のことをいいます.日本では高齢者の割合は世界で最も高い水準で,2015 年 には 25%を超えると予想されています.現在,認知症の高齢者はますます増加しており,462万人(高齢者 の 15%)です.糖尿病があると認知症のリスクは 1.5 倍から 4 倍になります.糖尿病のある人では,動脈硬化の合併症であるラクナ梗塞とよばれる小梗塞が多発することのよる,脳血管性認知症をきたすことは以前より 知られてきました.

また,最近はアルツハイマー病による認知症が最も多いとわかってきました.アルツハイマー型は,脳にアミロイドβ というたんぱく質がたまり,正常の脳細胞が壊れ,脳委縮が起こります.インスリンはアミロイドβの蓄積を抑制し ますが,高インスリン血症があると,脳にいくインスリンの移行が減って,脳におけるインスリン作用が減弱して,ア ルツハイマー病の発症を促進します.

未治療の糖尿病では,HbA1c 7%以上のものでは認知症の発症頻度が HbA1c 5.2%以下のものに比し 4.8 倍と報告されています.また,治療による低血糖も認知症の悪化につながります.認知症のある高齢者で は極端な高血糖や低血糖を防ぐことが大切となります.

認知症になると本人のみならず,家族にとって大きな負 担となります.年をとっても元気に生活するためには,糖尿病の管理は重要です.食事療法・運動療法を継続 することは認知症予防にもつながります.

*高インスリン血症 高血糖を抑えるためにインスリンホルモンが大量に分泌され、血液中のインスリン濃度が高くなっている状態