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脳血管バイパス術「手術の目的」

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2015年01月14日

皆さんは「脳血行再建術」って御存知でしょうか。多分聞き慣れない手術だと思いますので、分かりやすく説明していきます。
「脳血行再建術」といっても、その方法は大きく分けて2種類あります。

  1. 脳血管バイパス術
  2. 頸動脈内膜剥離術/頸動脈ステント留置術

今回は、1.の「脳血管バイパス術」について説明します。

副院長・脳神経センター長・脳神経外科部長 遠藤 純男

手術の目的

手術の目的は大きく2つあります。

  1. 脳の血流の少ない所の血管に、別の所から血管を持ってきて繋いであげることで、血流が不足している部位の血流を増やし、脳梗塞を治療する目的。
  2. 脳の太い血管や重要な血管の部分に病変があり、そこの血管の血流を止めて病変の治療をするために、別の血液の流れ道を作る目的。

血液や血管は人体にとって非常に重要で、特に脳は沢山の血液を必要とし、1分間に750mLもの血液が流れ込んできます。

脳に血液を送る血管は合計4本あります。手で触れる事ができる左右の頸動脈(総頸動脈(CCA)と言います)と、首の中心部を走るために手では触れる事ができない左右の椎骨動脈(VA)です。

総頸動脈は顎の下で更に2本の血管に分かれます。1つは内頸動脈(ICA)といって脳に酸素と栄養を運びます。もう1つは外頸動脈(ECA)といい主に顔面や頭皮の組織に血流を送ります。

脳血行再建術|脳血管バイパス術|脳と脳動脈との関係

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手術目的1.についての説明です。

脳に血流を送る血管(内頸動脈(ICA)椎骨動脈(VA))が細くなったり(狭窄)詰まったり(閉塞)すると、脳の血流が不足し、一過性に手足の麻痺がでたり言葉が出なくなったりします(>一過性脳虚血発作)。さらに病状が進行すると脳梗塞になります。脳梗塞が完成してしまうと、手足の強い麻痺や言語障害、さらには意識障害(重症)などの症状が出現します。

バイパス手術は、症状がまだ軽いうちに、詰まった血管の部位には手を加えないで、そこから先の血流が不足している領域の脳血管に、脳以外の血管を持ってきて血管同士を繋ぎ合わせることで、不足した脳血流を補い脳梗塞の悪化を防ぐために行われます。

バイパス手術は、手術用顕微鏡を使うマイクロサージェリーによって以下の手順で行います。

前述の外頸動脈の枝の一つで頭皮に栄養を運んでいる浅側頭動脈(STA)(こめかみで脈打っている動脈)をバイパス形成に利用します。直径わずか1mm程しかない血管をまず剥離しておき、次に開頭して脳を露出して脳の血管を確認し、この2本の血管を繋ぎ合わせます。吻合した直後は、この新しいバイパス血管を流れ始める血液量はまだ少ないですが、数週間経つと脳の需要に応じて沢山の血液を供給できるようになります。

 直径約1mmの血管を手術用顕微鏡下で25ミクロンの細さのナイロン糸を使って、吻合面を約12針で繋ぐのですが、この大変微細で精密さを要する技術をマスターするためにはしっかりとした指導者についてトレーニングする事が必要です。このような微小血管の吻合は技術がまずいと必ず詰まって用をなさないだけでなく、重大な合併症を起こすことになりかねないのです。