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コラム

肺気腫(はいきしゅ)のお話

コラム

内科 副部長 小澤 哲二

 風邪をひいている訳でもないのに、咳や痰がよく出るようになったり、日常の平坦な道では大丈夫なのに、階段や坂道の上り下りで息が切れたりしていませんか。年のせいだと思っているかもしれませんが、若い頃からタバコを吸い続けている方であれば、その症状の原因は肺気腫であるかもしれません。

【肺気腫とは】

 肺には気管支や肺胞という組織が集まっていて、呼吸により取り込まれた酸素と血液中の二酸化炭素を交換する役割を持っています。タバコを吸い続けていると、気管支の壁が厚くなり、痰が増え、肺胞の壁が壊れてしまいます。隣の肺胞と合わさって大きな袋のようになったり、弾力性が無くなり、呼吸機能が低下、息切れなどの症状が現れるようになる病気が肺気腫です。
 肺気腫の初期には咳や痰、息切れがあっても、しばらく安静にすると症状は治まりますが、肺気腫が進行すると、安静にしていても症状が出るようになります。

【肺気腫の診断】

 肺気腫を診断するためには、病院での詳しい検査が必要です。胸部レントゲン検査やさらに細かく肺の状態を評価する胸部CT検査による画像診断で肺気腫に特徴的な所見が確認でき、肺気腫の程度や他の病気との鑑別が可能になります。
 呼吸機能検査を行うことで、肺活量と1秒率を調べます。1秒率とは最初の1秒間で息を吐き出せる量を測定することです。1秒率が低いほど、息を吐き出しにくい状態であると分かります。1秒率が70%以下の場合、肺気腫である可能性が高くなります。

【肺気腫の治療】

 肺気腫の原因の多くは喫煙による肺胞の炎症、破壊といわれているため、禁煙が最も大切です。現在の医学では残念ながら肺気腫になると、肺を元に戻すことは出来ません。肺気腫を根本的に治す治療方法はありませんが、症状を改善する薬物療法や呼吸リハビリテーションはあります。
 薬物療法としては吸入薬が使われます。抗コリン薬やβ2刺激薬と呼ばれる主に気管支を広げる効果のある気管支拡張薬を使用し、呼吸しやすくする治療が行われます。吸入のステロイドによる治療が行われることもあります。

 薬物療法以外に呼吸訓練や運動療法、栄養療法といった呼吸リハビリテーションも有効です。 楽な呼吸の方法の指導、筋肉量の減少を防ぐ運動、栄養不良を防ぐ栄養指導が行われます。肺気腫が進行し重症化すると、十分な酸素を肺に取り入れることが難しくなり、酸素を補う在宅酸素療法がおこなわれることがあります。
 肺気腫の症状がひどくなる前に禁煙の開始や病院での相談、受診をおすすめします。

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