平成25年に悪性グリオーマに対してもう一つ新たに認可されたお薬があります。
悪性神経膠腫(グリオーマ WHO grade3ないしは4)に対しては、ある条件のもとに手術中に使用できる化学療法剤があります。ある条件とは、手術中に迅速病理診断が必須であるということです。この薬はいわゆる抗がん剤であり、ということは当然ながら病理診断がないと使用できません。
術中迅速病理診断とは、脳腫瘍を日常的に手術している病院では当然ながら行っている病理診断方法です。手術中に病理の先生に摘出した組織を診ていただき、暫定診断ではありますが、病理診断をしていただくことです。いくら、グリオーマっぽいと思っていても病理診断がないと使用することはできません。
このお薬の成分そのものは、海外では以前より使用されていたカルムスチン(BCNU)というお薬で、特に新薬として世の中に出てきたものではありません。
日本ではBCNUは保険適応ではなかったのですが、今回初めて脳内留置用剤として認可されたものです。
腫瘍摘出腔に張り付けるように置いてくることで、徐々にお薬が脳内に浸透し、摘出腔周辺に残存しているであろう腫瘍細胞を叩き潰そうというコンセプトのお薬です。
悪性神経膠腫の場合、手術のみでの完治は困難なため、その後の放射線治療や化学療法が必要になります。
手術からの体力回復やお傷の具合により次の治療までのタイムラグをこのお薬を使うことで少しでも埋まればと考え、当院では術中迅速病理診断で悪性神経膠腫との診断を得た場合には使用しています。もちろん、特徴的な副作用などがありますので、術前に十分にお話しし、納得していただいた場合に使用しております。
平成25年1月から保険適応となってから当院では8月現在5例で使用していますが、幸いにも大きな合併症は経験していませんが十分に注意して使用しています。
論文のデータ上では約2か月の生命予後延長効果があったとされています。