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神経膠腫(グリオーマ)の手術についてお話しいたしましょう。
脳腫瘍の手術は当然、「腫瘍細胞を可能な限り摘出する」ということが最大の目的ですが、患者様やご家族様が実際に目にされるのは「傷」や「手術の痕」なのです。いかに頭の中に対していい手術を行っても、傷が目立ったり、希望もしない丸坊主になってしまうことは術後の精神的ストレスや傷の感染症リスクも増大させてしまう可能性がありますし、少しでも傷が目立たないほうが社会復帰も早いかと考えています。理想は、「本当に頭の手術を受けてきたの?」と退院直後から周りの方に言われるほどの美しい傷跡を心がけています。
まず、患者様からよく頂く質問「傷は目立ちますか?」「術後痛いですか?」「手術のタイミングは?」「摘出した空間はどうなるのですか?」などにつきQ&A方式でお話いたします。
Q1 傷は目立ちますか?
A1 目立たないように原則「無剃毛」で行い、皮膚切開は髪の毛が生えている範囲内で行います。また、髪の毛が少ない方の場合、皮膚の下の凹凸が目立ちやすくなりますので、手術中に一時的にはずした頭蓋骨を戻す際にちょっとしたテクニックを用いて、少しでも皮膚の凸凹を出さないように努力しています。
術後7日目の患者様
グリオーマ摘出術後7日目の若年女性の患者様です。どこが手術痕だかわからない傷を心がけています。
傷跡周囲の髪の毛を分けてみますと・・・
分け目のところが皮膚切開の部位です
Q2 術後の痛みは強いですか?
A2 盲腸の手術の後、笑うと痛いとよく言われますが、お腹の皮膚と違い、頭の皮膚はすぐ下に骨があり、ほとんど動くことがないため(擦れないため)、痛みに対する感受性に個人差がありますが、通常の痛み止めを適宜使って疼痛コントロールは十分に可能です。術後早い方は1週間で退院される方もいらっしゃいます。
Q3 摘出した空間は元に戻りますか?どんな画像になりますか?
A3 脳細胞は再生能力がほとんどないために、摘出した空間はあいたままになります。といっても、頭の中は脳脊髄液といわれるお水で満たされているため、摘出した空間にはお水が入って、脳を安定化させていますので、通常の生活には何ら支障はありません。
神経膠腫手術、術前が左側、術後約1年が右側の画像です。このように、MRI画像上はあたかも空間になっているように見えますが、実際にはお水(髄液)が満たされており、日常生活は通常に送られておられます。
Q4 手術のタイミングは早いほうがいいのですか?
A4 特に、神経膠腫(グリオーマ)で、悪性(グレード3/4)が疑われる場合は少しでも早いほうがいいのは間違いありません。浸潤性が強く、悪性グリオーマの場合、数週間ほどでも急激に大きくなってしまい、全摘出が困難になる場合があります。しかし、術前の全身検索も大切です。手術は5時間以上かかることが多く、全身麻酔にお体が耐えられるかなども調べないといけません。また、転移性脳腫瘍も念頭に入れつつ、お腹やお胸の検査(内視鏡検査や超音波検査、胸部/腹部CT検査など)、場合により眼科的検査も迅速に行う必要もあります。当院では適度な規模の総合病院であり、消化器センターや眼科など他科と密接に連携をとり、早期の手術が必要な場合には約1週間ですべての術前検査を済ませるようにしてます。
Q5 手術前の検査はどのようなものがありますか?
A5 頭に関しては、MRI検査が必須です。MRIも造影剤を使用した造影MRI検査が必須です。またMRIを使って、腫瘍の種類や悪性度をある程度見極められるMRS。手足を動かす運動機能を持った領域の近くに腫瘍がある場合、神経線維と腫瘍との関係を描出するDTIトラクトグラフィーが必要です。
また、前述のA4でもお話しましたとおり、全身検索も大切になりますので、脳外科のみならず、他の領域の先生方にもご協力いただくことが大切です。これは脳腫瘍手術のみならず、脳卒中を含め、脳外科疾患一般にも言えることですが、特に消化器領域の連携は必須です(緊急で内視鏡検査が必要になることがあります)。